極鬼舎
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おおすぎ・さかえ
日本を代表する無政府主義者。1885年、
香川生まれ。名古屋の陸軍幼年学校に
入学するもケンカ騒ぎを起こして退学。
東京外国語大選科に入学したころより
『平民新聞』で執筆をする。1923年、
憲兵隊(軍警察)に拘引され、殺害される。
戦前戦後を通じ、現代に至るまで、大杉栄のファンは多い。そのファン層のほとんどは無政府主義にシンパシーを感じる個人主義者であり、反権力主義者であるのは間違いない。
12人が死刑となった(1910年)のさい、大杉は赤旗事件の検挙によって獄中にいたため、弾圧を免れた。その結果、一定期間の言論活動の猶予が与えられたわけだが、所詮は10数年の月日でしかなかった。甘粕正彦以下の暴挙によって、大杉は非業の死を遂げることになるが、その運命のイタズラが、彼を無政府主義者のスーパースターにすることになった。
【女にモテる無政府主義】
大杉は女性にモテた。そういうことも、国家権力の反感を買ったであろうことは間違いない。外国語学校(現・東京外国語大)を卒業した二十歳のころから、親子ほどちがう女性と同棲生活をしていた。ただし、まだこのころは無政府主義への確信に達してはいない。社会主義という融和的な理念も受け入れるスタンスがあった。
21歳になり、先の女性とは違う女性と、結婚する。その女性は、作家・堀柴山の妹、堀保子である。妻を得て、いったんんは安定する大杉であったが、それも10年もたなかった。
30歳のころ、婦人運動家の神近市子と知り合い、深い関係となる。そして翌年には、同じく婦人運動をしていた伊藤野枝と知り合い、関係を結ぶ。伊藤は婦人雑誌青鞜(せいとう)で執筆していたフェミニストの先駆者の一人として知られる。彼女は異端の文学者・辻潤と結婚していたが、大杉に乗り換えた。
31歳のとき、大杉の節操のない下半身に憎悪を抱いた神近市子に、葉山で刺されケガをする。32歳で堀保子と離別し、同年には伊藤野枝との間に子供・魔子が生まれた。
痛い目にも遭ってはいるが、女性にモテていたという大杉のキャラクターも、後年のファンも増やしていった理由のひとつだろう。
しかし、そんな大杉が、天皇制リゴリズムを主導する国家権力の目障りであったことは間違いない。
中央が娘・魔子を抱いた大杉。向かって右が伊藤野枝。この写真は1923(大正12)年、殺された年に撮影された。
【甘粕事件という悲劇】
神近市子に刺されてマスコミを騒がせたあたりから、大杉が白色テロルの犠牲となるまでのカウントダウンが始まっていたと言っていい。いまどきのホリエモンと同様、目立つやつは潰すのが、国家権力の体質だからである。
大杉は、23(大正12)年、関東大震災の混乱に乗じて殺害される。14万人以上の死者・行方不明者出した大震災から、2週間ほど経過した後に、大杉は命を奪われた。殺害したのは憲兵大尉・甘粕正彦、憲兵曹長・森慶次郎らであった。これを甘粕事件という。
同時に伊藤野枝と大杉の甥っ子である橘宗一も殺された。宗一はまだ6歳という幼児だった。3人の死体はムシロに包まれ井戸に放り込まれた。
76(昭和51)年に発見された検視資料が、このときの悲惨さを物語っていた。大杉。伊藤の死体には無数の暴行の跡があり、憎しみを込めたリンチの末に殺害されたことは明白だった。
大杉が支持される理由のひとつに、その容貌もあると思われる。大杉のサルトルのような斜視がかった眼つきは、奇妙な魅力を感じさせるものだ。
甘粕事件の後、過激性を増してテロに走り死刑となった無政府主義者・中浜鉄(ギロチン社)の追悼詩が、大杉の眼力を描写している。「『杉よ!眼の男よ!』と俺は今、骸骨の前に起って呼びかける。彼は黙ってる。彼は俺を見て、ニヤリ、ニタリと苦笑いしている。太い白眼の底一ぱいに、黒い熱涙を漂わして時々、海光のキラメキを放って俺の顔を射る(後略)」
大杉は「個人の力」を誰よりも知悉していた。そのため強い個人主義の行使として派手な女性関係を演じる結果になり、厳格な保守主義者たちの反感を買うことになった。
だが、甘粕正彦という軍組織に殉じた男に葬られた大杉の最期は、保守主義や国家に敗北したのではない。敵対する個人が従属していた場所がたまたま、保守の場であり、国家であったというだけの話とも言える。もちろん、だからと言って、甘粕の罪が相対化されるとも思えないのが、多くの大杉ファンの心情であろう。
(栗原正和氏)より転載
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